6.フォーク・リヴァイヴァルからモダン・フォーク・ブームへ-1960~1964年

  1. モダン・フォーク・ブーム(modern folk boom)
  2. ボブ・ディラン(Bob Dylan)の登場

6.フォーク・リヴァイヴァルからモダン・フォーク・ブームへ

B.ボブ・ディラン(Bob Dylan)の登場
Bob Dylan

Bob Dylan



ボブ・ディラン(Bob Dylan)が業界に注目されたのは、1963年発表したセカンドアルバム「フリーホイーリン・ボブ・ディラン(The Freewheelin’ Bob Dylan)」に収録された「風に吹かれて(Blowin’ in the Wind)」「くよくよするなよ(Don’t Think Twice, It’s All Right)」の2曲が「ピーター・ポール&マリー(Peter, Paul and Mary)」にカバーされ、世界的にヒットしてから。

ピーター・ポール&マリーの「風に吹かれて(Blowin’ in the Wind)」はビルボードで2位のヒットを記録。
同年「モンタレー・フォーク・フェスティヴァル」に出演。
フォーク界のニューヒーロー、フォークの貴公子、と注目されます。

The Freewheelin' Bob Dylan

The Freewheelin’ Bob Dylan

この「風に吹かれて(Blowin’ in the Wind)」のヒットで、ソングライターとして一躍注目され、同アルバムに収録されている「戦争の親玉 (Masters of War)」「はげしい雨が降る(A Hard Rain’s a-Gonna Fall)」「第3次世界大戦を語るブルース(Talking World War III Blues)」が、公民権運動が高まっていたアメリカで、プロテストソングの旗手として脚光を浴びるようになります。

当時のボブ・ディランを支持していたのは、やはり、大学生、大人のリスナーでした。

当時の音楽の流通はおもにレコードであり、ロックンロールは主にシングル先行で、人気が出てきたら曲をかき集めてアルバムにしていたことに対し、フォークのミュージシャンは、アルバムで自分たちの世界観を表現し、そこからシングルをカットして発売する、という手法をとっていました。
そのため、フォークの購買層がお金がある大学生、大人がおおいことも事実でした。

Broadside magazine

Broadside magazine

かれらには、レコードや、ピート・シーガーが創刊したフォークソング情報誌「ブロードサイド」に発表されるディランの歌詞の内容がとても重要でした。

彼らのディランに対する評価は「歌声はひどいが、歌詞は奥深い」というものでした。

確かに、初期のボブ・ディランのスタイルは「アコースティックギター、ブルース調の曲、プロテスト的な詩、学生風な衣装」と、当時のフォークソングミュージシャンの一般的なスタイルではありました。

しかし、彼はそもそも、高校のときには全盛だったロックンロールブームに傾倒し、「チャック・ベリー」や「リトル・リチャード」がアイドルな青年で、エレクトリックギターを弾きならし、ロックバンドも組み、ロックンロールのスターを目指していた青年でした。

ブルースハープを荒々しく吹き鳴らし、ギターをかきならし乱暴に歌い上げるスタイルのなかに、当時のほかのフォークシンガーとは違う、ロックンロールのビート感が隠れています。

その「詩」でさえ、「こうあるべきだ」という声だかな批判の言葉ではなく、思想を最優先せず、「個」からの視点という形を取っています。こういった部分も、他のフォークシンガーとは一線を画すものでした。

世間はディランを「フォークの神様」とまであがめるようになりますが、過激化する社会運動、それに付随しての自分に対するプロテストシンガーというイメージに嫌気がさしてきたディランは、1964年、プロテストソングが一曲もない「アナザー・サイド・オブ・ボブ・ディラン(Another Side of Bob Dylan)」を発表。

THE NEWPORT FOLK FESTIVAL

The Newport Folk Festival



そして、「詩」でメッセージを伝えることだけにこだわる「フォークソング」に限界を感じるようになるディランの前に、新しい波がイギリスからやってきます。

このことがきっかけで、フォーク界を揺るがす事件が起こるのですが、それはもう少し後のこと。

ディランは、フォークブームで磨きをかけた「詩人」としての鋭い才能を、ロックンロールの世界に持ち帰ることになるのです。


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